競争入札参加資格申請をしたけど、指名されないため入札に参加できず、どうすればいいかお困りではないでしょうか
ただ待っているだけでは、指名業者に選定されることはありません。
正しい方法で営業活動を行う必要があります。
今回は、指名を得るための営業テクニックについてお話します。
指名競争入札の有無を調べる
まずは、対象の官公庁において、指名競争入札発注の有無を確認する必要があります。
一般競争入札案件でしか発注のない官公庁に「指名のお願い」をする営業活動を行ってもあまり意味がありません。
過去の入札記録から、指名競争入札で行われた入札だったのか、一般競争入札で行われた入札だったのか、またどの程度の発注量があったのかをしっかり確認しましょう。
指名業者選定を行う部署
指名競争入札では、通常10社程度が指名業者に選定されます。
それでは、その10社は誰が選定するのでしょうか。
以下の2つが通常、業者選定を行う部署になります。
(1つの部署で行う場合と2つの部署で行う場合はあります)
営業活動を行う上で重要な部署になります。
しっかりと押さえておきましょう!!
原課(担当課)
道路の案件であれば道路課、河川の案件であれば河川課など、発注担当課のことをいいます。
(一般的に該当する担当課のことを「原課(げんか)」と呼びます)
契約課(契約担当課)
契約関係の窓口となる担当部署です。
官公庁によって、「契約課」「契約検査課」「調度課」といった名称があります。
官公庁訪問のポイント
営業リストの作成
まずは過去の入札結果を確認し、どのような案件に、どのような業者が選定されているのかを確認しましょう。
本社や支社の場所はどこか、技術的特徴を持っているのかなど、指名選定されている業者の特徴を知ることで、ある程度の指名基準が分かります。
また、指名基準を明確に公表している場合もあるので、そちらも確認しておきましょう。
そしてあなたの会社が、その指名基準に合致しそうかをチェックし、「ここなら指名に入れてもらえるかも」というところを優先し、営業先リストの作成を行いましょう。
アプローチ方法
営業先リストが完成し、いよいよ営業活動です。
では誰を訪ねて行けばいいのかというと、先ほどお話した通り、指名業者選定を担当する部署の長宛に営業活動を行います。
担当課の入り口付近には、配席表が掲示されており、そこで部長や課長の席が確認できます。
ただし、そこで在籍が確認されて「お、ラッキー!ちょうどいるぞ。」と、勝手に職務室に入ってはいけません!
私が営業職で入社した20年前は、各社の営業マンが部長や課長の席で話しかけに行ったり、不在の場合は名刺を机の上に置いたりということがありましたが、現在においてそのような行為をすると「俺が部長の間は絶対にあの会社は呼ばないぞ!」と逆効果になる可能性があるので、くれぐれも気を付けて下さいね。
ではどうすればいいのかというと、入口やカウンター付近の職員さんに「課長に挨拶させてほしい」旨を伝えましょう。手が空いてるのであれば奥へ通してくれるか、カウンターまで出てきてくれます。
ただし話を聞いてくれるからと言って、ゆっくり話ができる訳ではありません。
要点を絞って、簡潔に話をしましょう。
トークフロー
初めて訪問する場合は「今回、初めて●●●市役所(官公庁名)に競争入札参加資格申請をさせて頂きました、●●と申します。まずはご挨拶だけでもさせて頂きたいと思って来ました。今後ともよろしくお願いします」といった程度で構いません。
もし相手の課長から「従業員数は何人くらいですか?」「得意分野は?」「過去の実績は?」と興味を持ってもらえそうなのであれば、しっかりとお答えしましょう。
ちなみに会社を立ち上げたばかりで実績がないのであれば、「会社としての実績はまだないですが、私個人はこれまでこのような測量(設計)の主任技術者として携わってきた実績があります。」と、『こんな私がきちんと業務を遂行しますよ』ということを分かってもらえるように話をしましょう。
会社としての実績がなくても大丈夫!
あなた個人が携わってきた業務を知ってもらいましょう。
パンフレット
併せて、会社のパンフレットも持参しておきましょう。渡すタイミングは、一緒にパンフレットを見ながら補足の話を聞いてもらえる時間がありそうな時がベストです。
またパンフレットは、何もかも盛り込んで作るのではなく、ポイントを絞って作ることをお勧めします。
そうすることによって、相手が興味を持ったことに対して、補足の説明をしたりその背景についての会話を一緒にすることができるからです。
ちなみにですが、
「今日は忙しいので、パンフレットだけでももらっておきます」や
「せめてパンフレットだけでも置いて帰ります」といった場合、チラっと見てゴミ箱行きとなります。
パンフレットは、相手の方と一緒に見ながら説明できるタイミングをみて渡すようにしましょう。
相手が興味を持つ話題
官公庁の職員は、他の官公庁の動向や課題について興味を持つ傾向にあります。
なぜなら、同じような課題をその官公庁も持っているケースが多いからです。
そんな時に「実は、以前他の自治体さんの業務を行っている時にこんな課題が出たことがある。それをこのような方法で解決した」という話は、とても興味深いものになります。
①自分が話せる内容で
②相手が興味を持っている事
を考えて話をしましょう。
2回目の訪問
2回目の営業は、「なんとなく覚えてくれていそう」な、1~2週間後くらいというタイミングに再訪しましょう。
その際は、前回よりもう少し踏み込んで、「わが社は測量の(設計の)こういったところが得意分野です。こちらの部署では、過去に何度もこの分野の発注がされているかと思います。是非弊社にもチャンスを欲しい」ということを伝えましょう。
ただし前提として、過去にどういった案件が発注されているか、今後どのような案件が発注予定なのか、という事を必ず確認しておきましょう。
参考見積
官公庁も初めて営業に来た会社を指名するということは「もしこの会社が落札したら、きちんと業務を完納できるのかな?」といった不安を持っています。
そこでおすすめは「参考見積」です。
官公庁は予定制限価格を設定するために、積算資料を持っています。
しかし稀に積算資料にない工種を発注することがあり、その際、入札とは関係なしに、複数社へ「参考見積のお願い」をすることがあります。
簡単に言えば、「この仕事ってみなさんは相場をどれくらいと思っているのか、よかったら教えて」というものです。
ここでお願いされる業者は、「この会社はこういったことが得意そうだ・いやな顔をせずに協力してくれそうだ」と言った理由から声がかかることが多いです。
もちろんこれは「参考見積」なので、他社より安いからといって契約できるものでもありませんし、あくまでちょっとしたお手伝いです。
「別に仕事が貰えるわけじゃないし、協力なんてしても意味なくない?」ではなく、進んで協力するようにしましょう。
このような協力をすることによって、業者選定する官公庁からすれば「この会社は参考見積の際に協力してくれたから、入札に参加させてあげよう」といったことがよく見られます。
実際に私も参考見積をした後の指名はほぼ選定されていました。
ちなみにですが、参考見積を出したからといって、その見積金額が採用されたかは別の話です。
最終的に参考見積をした複数の金額の平均を採用することもあれば、あくまで参考にするだけで発注部署が金額を決定することもあります。
見積り合わせと随意契約
少額のためや緊急性があるなどの理由から、競争入札を行わない契約方法です。
(ざっくりお伝えしますが、一旦はこのような理解で結構です)
これらは競争入札を行わず、1社への随意契約や3社程度から見積りを徴収し、契約者を選定します。
契約者に選ばれるには、過去の実績の他に、会社の俊敏性や正確性・機動力などを基に、選定が行われます。
簡単に言えば、「こんな緊急の業務でも、あの会社ならキチンとした対応をしてもらえるだろう」と思われる会社に声がかかります。
指名実績や業務実績が増えてくると、こういった声掛けが増えてきます。
これが定着することを目標にしましょう!
選定基準はあっても、最後は人?
指名業者を選定する際は、何かしらの条件でフィルターをかけて業者の絞り込みを行います。
例として・・・
このような方法で業者数を絞っていきます。
さて上記例ではこの時点で21社まで絞られました。
続きを見てみましょう。
「その他」という謎のフィルター・・・
以前、担当課長に「”その他”ってどういうものなんですか?」と聞きに行くと、「う~ん・・・いろいろかな。。。」と言われたことがあります。
私はここに『主観』が多少なりとも入ってくると思っています。
例えばこの21社の中の1社が、以前別業務受注時に、現場作業中にタバコのポイ捨てで地元から何度もクレームが入った会社だとしましょう。これは機械的なフィルターでは排除できません。
みなさんならどうでしょうか?
もし私が業者選定する立場であれば「一生メンバーには入れない」まではいかなくても「ペナルティーとして何回かは指名から外して反省させてやろう」くらいは考えると思います。
一方、過去に受注した際、地元の人から「あの会社の人はすごく丁寧に対応してくれた」といった好感が持てる会社や、まだ実績がなくても「この会社なら丁寧に業務を遂行してくれそうだ」という良い印象を持たれていれば、おのずと指名業者10社に選定されていきます。
受注した際には、「選んで良かった」と思ってもらえるよう、
誠意を持って業務を履行することが重要です
指名の連鎖
官公庁の実績が全くない会社を入札メンバーに入れることは、選定する側としては少なからず不安を感じます。
しかし、例えば隣の課の案件で、指名メンバーに選定された、他の官公庁で受注した、といった実績が一つでもあれば「あの熱心に営業に来てくれている会社、指名メンバーに入れても大丈夫そうだな」という見方に変わってきます。
官公庁の違いや部署の違いがあっても、業務内容が測量や設計という意味では同じです。
実際に他課の選定業者を参考にした、といった事例も多くあります。
指名の実績・業務の実績は、選定する側の大きな判断材料になるので、指名の連鎖が起こりやすい状態になります。
まとめ
指名実績・受注実績がなく、初めて営業をする官公庁から指名を得られることは、簡単なことではありません。
しかし、きちんと発注情報や過去の指名業者の情報等を知り、正しい営業活動をすれば、必ず指名メンバーに選定される日はやってきます。
地域性や実績、資本力など、選定の条件としては重要な部分であることは間違いありません。
しかし、最後の「その他」で勝ち残るポイントは「誠意と熱意」です。
職員はあなたの「人となり」や「佇まい」を見ています。
あなたも「上手にひっかけてこっちを向かせてやろう」という気持ちではなく、リスペクトの気持ちを持ちながら、あなたの会社の事を知ってもらいましょう。
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