「初めて見る工種で単価が分からない」
そんな経験、ありませんか?
積算基準書にも記載されていない、過去の単価情報も不明。
でも単価が出せなければ、最低制限価格が設定されている案件では、適正価格から外れてしまい、落札できる可能性も低くなってしまいます。
本記事では、そんな「積算基準がない工種」に出会ったとき、過去の入札結果から単価を推定する現実的な方法について解説します。

運任せにせず、実務者として取るべきアプローチ方法を
考えて行きましょう。
積算基準がない=積算できないという現実
設計価格算出において、「積算基準書にない工種」は大きな壁です。
積算できない=適正な金額が出せない=落札機会を失う
という状況に直面することになります。
まずは「質問」で突破口をさがそう
こうした場合、まず正攻法として「質問期間中に発注者へ質問を出す」という手があります。
『〇〇について、歩掛または参考にしている資料があればご教授下さい』と質問してみましょう。
多くの官公庁では、正式に質問を行えば必ず回答をもらえます。
ただし残念ながら、
「単価や歩掛を公表することはできません」
「貴社で必要と思われる金額を算出してください」
というテンプレート回答が返ってくるケースも少なくありません。
『それが分からないから困ってるのに・・・!』というのが正直な気持ちでしょう。
単価のヒントは”過去の金入り設計書”
そこで活用したいのが、過去の同工種を含んだ入札案件の情報です。
情報コーナーでの閲覧や、開示請求によって、『金入り設計書(内訳書)を入手できれば、そこに記載された単価を参考にすることができます。
黒塗り設計書から読み解く!単価推定の実践テクニック
とはいえ、実際に手に入れた金入り設計書を見ると、そのほとんどが黒塗りということがよくあります。

このように、測量業務価格計だけが開示されており、今回知りたかった『●●調査図作成』の単価が分からない状態です。
だからといって、ここで諦めないでください!
ここから黒塗り箇所を少しずつオープンにしていってみましょう!
まず、前提として、官公庁の設定する予定価格は、千円丸めか万円丸めになっていることが多くあります。
今回の場合、直接測量費計と諸経費を足した金額が、2,317,000~2,317,999になるよう計算する必要があります。
それでは、直接測量費計と諸経費を逆算して求めていきましょう。
諸経費の計算方法
諸経費の算出方法については、以前の記事でもお伝えしましたが、算出式があるので、これを使って算出します。
※令和7年4月現在

上記青枠は、直接測量費計が \956,000以下の場合に適用する計算式です。
一方緑枠は、直接測量費計が \151,700,001を超えた場合に適用する計算式です。
今回の直接業務価格計が \2,317,000の場合、直接測量費「50万を超え1億円以下」なので赤枠の計算式を適用します。
まずはエクセルで下の表を作成して下さい。

Ⓑのセルには =Ⓐ*ROUND(((371.23*Ⓐ^-0.107)/100),3) と入力します。
Ⓒのセルには =Ⓐ+Ⓑ と入力します。
(※数式中にあるⒶとⒷはセル番号)
上記計算式の諸経費率は、51.7%~91.2%となります。
上記エクセル式を使って、直接測量費計と諸経費を出してみましょう。
まず、Ⓐに数字をいれますが、
直接測量費計が50万の場合の諸経費は約90%(直接費×1.9)
1億の場合の諸経費は約50%(直接費×1.5)
ということを踏まえ、一旦「80%くらいかな?」と想定し、
2,317,000 / 1.8 = 1,287,000 と入れてみて下さい。

そうすると、測量業務価格が 2,347,488 と3万ほどオーバーとなるので、
次はⒶの値を 1,287,000 から2万ほど引いて、 1,267,000 と入れていき、
微調整を繰り返しながら、測量業務価格が 2,317,000~2,317,999となる、
直接測量費計を探していきます。
そうすると、Ⓐは 1,269,700~1,270,100 あたりということが分かってきます。
ここでは、「だいたいこれくらい」ということしか分からないので、
仮に直接測量費計を 1,270,000と決めてしまいます。
そうすると、

これで黒塗り部分の2カ所を外すことができました。
直接測量費計からの逆算方法
次に、直接測量費の各単価を算出していきます。
4級基準点測量と詳細測量については、積算が可能なので、単価を入力することができます。
・・・が、ここで注意が必要なのは、これがR4年度の金入り設計書だということ。
なので、積算する時には、R4年度の歩掛と技術者単価を使用する必要があります。

ここでは計算しやすいように、
4級基準点測量の単価を 29,000
詳細測量1式の単価を 710,000
とします。(実際にはきちんと積算してくださいね)
そうすると、●●調査図作成0.5万㎡の金額は
1,270,000 -( 290,000 + 710,000 )
= 270,000 となり、
1万㎡あたり、 540,000 となります。

仕上げは年度調整
全く分からなかった工種ですが、
「とりあえず、1万㎡あたり、540,000くらいと考えればいいんだな!」
ということが分かりました。
・・・が、ここで終わってはいけません!!
先ほども指摘しましたが、これはあくまでR4年度のものです。
歩掛が変わっていないとして、今(R7年度)ならどうなのかを考える必要があります。
それでは、令和4年度から令和7年度にかけての、技術者単価の推移を見てみましょう。

R4年度からR7年度にかけて技術者単価は、21.5%上昇していることを踏まえ、

この金額が、令和7年度の『●●調査図作成』の推定される単価となります。
さいごに
積算基準がないために、単価を算出できないのは、どの会社も同じです。
全ての会社が同じ条件なのであれば、少しでも努力をし、落札への可能性を高めましょう!!

運任せにせず、少しでも落札への可能性を
高めるよう努力しましょう。
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