工種と数量が書かれた金抜き設計書。業務の内容は理解できるけど、諸経費?一般管理費?って何??
発注者が設定した予定制限価格が分からず、最低制限価格を下回ったり、あるいは予定制限価格を超過し失格になるなど、せっかく手に入れた入札の機会をムダにしていないでしょうか?
積算ができないと受注の機会も失われてしまいます。
積算は、専用のソフトを利用することで簡単に行うこともできますが、まずはソフトに頼らず、自らの力で積算ができるようにしましょう。
今回は、積算の方法についてポイントを絞ってお話ししていきます。
積算根拠となる基準書は?
国土交通省をはじめ、多くの官公庁が測量業・建コン業で積算基準として使用しているのが、
【設計業務等標準積算基準書(発行:一般財団法人 経済調査会】です。
通称『青本』と呼ばれるものです。
官公庁によっては、独自の材料費や機械経費率を計上し、単価設定を行っていることもありますが、基本はこの基準書が参考にされています。
毎年度新しいものが発行されますが、必ず購入しておきましょう。
歩掛(ぶがかり)とは
積算は、歩掛を使って行います。
『歩掛』とは、この業務を行うためには、どんなスキルを持った人で、どれだけの人工(にんく)が必要か、ということを表したものです。
人工とは、1人の人が8時間の労働することで1人工という表現をします。
(半日(4時間)の作業は0.5人工、1日半(12時間)の作業は1.5人工、と表します。)
簡単な歩掛例を見てみましょう(内容は適当なので、本気にしないでくださいね)
上記の例では、缶コーヒーを100ダース作るのに、どんな人が、どれだけの人工(手間)がかかるのか、そして材料費が5%かかりますよ、ということを表しています。
歩掛の時点では、まだ人工(手間)を表しているだけで、金額を表しているものではありません。
技術者の単価
各技術者の単価は、国土交通省がホームページ等で公表している、
『〇年度 設計業務委託等技術者単価』で確認することができます。
設計業務では「主任技術者」「理事、技師長」など、測量業務では「測量主任技師」「測量技師」などの職種ごとに基準日額(単価)が異なります。
またこの金額は毎年度更新されています。(※2024年現在、年々増加傾向にあります)
官公庁が何年度の単価を用いているのかを確認し、その年度の単価を使用しましょう。
さて、こちらもどのような形で技術者単価が表されるのか例を見てみましょう。
(くどいようですが、私が勝手に作ったものです。本気にしないでください!)
上記の例では、コーヒードリップ技師の人が1日(8時間)の労働で、32,000円という金額になるよ、といったことを表しています。
歩掛と技術者単価を使った積算方法例
それでは、ここまで説明してきました、歩掛と技術者単価を使って、先ほどの缶コーヒーの例で実際の積算をしてみましょう。
いかがですか?上記の例で計算すると1ダース当たり646円になることが分かります。
さらに測量や設計委託の場合は、諸経費や一般管理費といった費用がプラスされます。
また上記の例でお話すると、250mlの無糖という条件が標準とした場合、200mlにすることにより-0.1(10%マイナス)、加糖にすることにより+0.2(20%プラス)といった変化率というものも考慮する必要があります。
測量業務の積算例
それでは実際に、
【設計業務等標準積算基準書(令和6年度版)】
発行:一般財団法人 経済調査会
【令和6年3月から適用する設計委託等技術者単価】
公表:国土交通省
を参考に、積算してみましょう。
測量業務 金抜設計書(例)
下記、金抜設計書(例)で積算をしてみましょう。
積算に当たり必要となる資料(測量)
上記の金抜設計書を積算するために必要となる資料を抜粋します。
【設計業務等標準積算基準書(令和6年度版)】より
【設計業務等標準積算基準書(令和6年度版)】より
直接測量費の計算方法
それでは、抜粋した資料を使って各単価の積算をしましょう。
4級基準点測量
A | 抜粋した資料を転記 |
B | 直接人件費の合計 |
C | 直接人件費の合計に、それぞれの率をかけます |
D | 直接人件費と機械経費の合計に、精度管理費係数をかけます |
E | 35点当たりの金額となります (※1点当たりの単価は35で割ったもの) |
F | 基準点測量には地域の補正がかかります。 変化率が何もない場合は「1」のままですが、 抜粋資料より「耕地・丘陵地(-0.1)」となっているため、 『1+(-0.1)=0.9』の変化率を1点当たりの単価にかけます。 |
以上で、4級基準点の1点当たりの単価が算出されました。
現地測量
A | 抜粋した資料を転記 |
B | 直接人件費の合計 |
C | 直接人件費の合計に、それぞれの率をかけます |
D | 直接人件費と機械経費の合計に、精度管理費係数をかけます |
E | 0.1k㎡当たりの金額となります |
F | 現地測量には縮尺・地域の補正がかかります。 変化率が何もない場合は「1」のままですが、 抜粋資料より「耕地・丘陵地(+0.3)」となっているため、 『1+(+0.3)=1.3』の変化率を1点当たりの単価にかけます |
G | 現地測量は、0.1k㎡当たりの金額を計算し、その単価に数量をかけて金額を出すのではなく、 作業量補正を行うことで、ずばりその作業量の金額を算出する仕組みになっています |
こちらも現地測量1式当たりの金額が算出されました。
各単価の計算ができたので、実際の金抜設計書に入れてみましょう。
先ほど積算した、4級基準点測量と現地測量の単価を入れることで、直接測量費まで算出されました。
諸経費の積算方法
こちらも諸経費を算出するために必要となる資料を抜粋します。
【設計業務等標準積算基準書(令和6年度版)】より
ではこの資料を使って、諸経費率を求めてみましょう。
今回の直接測量費(成果検定費を除く)が、50万円~1億円以下なので、算出式を使います。
Z = 371.23 × 1,137,933 ^ -0.107
Z = 83.490792 = 83.5%
諸経費率は、83.5%と算出されたので、金抜設計書に入れていきましょう。
諸経費を算出するためには、『直接測量費 計』に諸経費率をかけます。
『直接測量費 計』と『諸経費』の合計が、本測量業務価格となります。
以上で、本測量業務の価格が算出されました。
設計業務の積算例
続いて設計業務の積算を行ってみましょう。
設計業務 金抜設計書(例)
設計業務の金抜設計書(例)を見てみましょう。
積算に当たり必要となる資料(設計)
上記の金抜設計書を積算するために必要となる資料を抜粋します。
【設計業務等標準積算基準書(令和6年度版)】より
直接原価の計算方法
抜粋した上記資料を基に、直接原価の計算を行ってみましょう。
A | 抜粋した資料を転記 |
B | 直接人件費の合計(補正前) |
C | 設計延長に対する補正係数K1(計算式により算出) |
D | 基礎地盤条件による補正係数K2(「一般地盤」=1.00) |
E | 測点間隔による補正係数K3(「20~25m」=1.00) |
F | 市街地における補正係数K4(「一般地区」=1.00) |
G | 補正係数(C*D*E*F) |
H | 直接人件費 計(のちに必要になるので控えておきましょう) |
「直接人件費 計」と、「電子計算機使用料(直接人件費×2%)」を足し、図面作成及び数量計算、それぞれの単価が算出されました。
それぞれの単価を金抜設計書に当てはめましょう。
それぞれの単価を当てはめることで、『直接原価』までの算出ができました。
注意
直接原価の横に赤字で(内 直接人件費 509,120)と記載しておきましょう。
これは先ほどの単価を算出するにあたり『H 直接人件費 計』を控えておいて下さい、とお伝えした金額(図面作成:356,310+数量計算:152,810)となります。
その他原価の計算方法
その他原価を算出するために必要となる資料を抜粋します。
上記計算式を使って『その他原価』を算出してみましょう。
と、その前に・・・
そうです!
『その他原価』を算出するためには、先ほど赤字で残しておいた
『直接人件費』が必要になります!!
『その他原価』を求めるのに必要となる金額は、『直接原価』ではなく『直接人件費』です!
くれぐれも間違えないようにしましょう!
一般管理費の計算方法
一般管理費を算出するために必要となる資料を抜粋します。
それでは、一般管理費等の計算式を使って計算しましょう。
一般管理費等の計算を行うには『業務原価』を使用します。
以上で、本設計業務の価格が算出されました。
まとめ
いかがでしたか?
今回行った積算はごく一部のもので、実際の測量や設計業務には、もっと多くの工種があり、また『現地測量』の積算のように様々な計算式があります。
しかし積算の基本を理解していれば、どんな工種や計算式であっても【設計業務等標準積算基準書(令和〇年度版)】を見ればある程度の積算はできます。
また積算をして入札を行って終わり、ではなく事後に公表される予定制限価格と自社の積算を比較し、間違っていた部分の原因を探るなどをして、しっかりと積算精度を向上させていきましょう!
積算精度の向上は、受注確度を高めます。
何度も繰り返し練習しましょうね!
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